制度を知る

特定技能で人を受け入れるとき、企業が最初にやること

「特定技能で外国人を採用したい」というご相談をいただくとき、最初に出てくる質問はたいてい同じです。どこで人を探せばいいのか、費用はいくらかかるのか、いつから働いてもらえるのか。

ただ、私たちが実務のうえで最初にご一緒するのは、そのどれでもありません。受け入れる前に、自社が「何をする立場になるのか」を決めるところからです。特定技能は、人を採用したら終わりの制度ではなく、受け入れた後に企業側が続けて行う義務がセットになっています。ここを決めずに人だけ先に決まると、入国の直前になって体制が間に合わない、という詰まり方をします。

この記事では、制度の条文を並べるのではなく、受け入れを決めた企業が実際に着手する順番で整理します。

最初にやることは「人を探すこと」ではない

特定技能1号で外国人を受け入れる企業は、出入国在留管理庁の用語で「受入れ機関(特定技能所属機関)」と呼ばれます。この立場になると、次の3つが同時に発生します。

  1. 特定技能雇用契約の基準を満たすこと
  2. 1号特定技能外国人支援計画をつくり、入管への申請時に提出すること
  3. 受け入れた後、継続して届出を行うこと

出入国在留管理庁は、雇用契約について「労働関係法令を遵守していることはもちろんのこと、特定技能雇用契約に関する基準を満たしている必要があります」としています(出入国在留管理庁「受入れ機関の方」2026年7月30日確認)。

つまり、賃金や労働時間が日本人と同等であること、といった契約そのものの中身が、在留資格の審査対象になります。求人を出す前に、自社の給与テーブルでこの条件を満たせるかを先に確かめておくほうが、後戻りが少なくて済みます。

支援計画は「書類」ではなく「体制の設計図」

3つのうち、最も準備に時間がかかるのが支援計画です。出入国在留管理庁は「特定技能1号を受け入れる場合は、1号特定技能外国人支援計画を作成し、入管への申請時に提出する必要があります」としています(同上)。

支援計画は自由記述の作文ではありません。行うべき支援の項目が決まっており、義務的支援として次の10項目が挙げられています。

# 義務的支援の項目
1 事前ガイダンス
2 出入国する際の送迎
3 住居確保・生活に必要な契約支援
4 生活オリエンテーション
5 公的手続等への同行
6 日本語学習の機会の提供
7 相談・苦情への対応
8 日本人との交流促進
9 転職支援(人員整理等の場合)
10 定期的な面談・行政機関への通報

出典:出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援・登録支援機関について」(2026年7月30日確認)

この10項目を上から読むと、**必要になる社内の手当てがそのまま見えてきます。**空港への送迎は誰が行くのか。住居は会社で借りるのか、本人名義で契約するときに保証人をどうするのか。相談・苦情への対応は、本人が理解できる言語でできるのか。日本語学習の機会は、業務時間内に置くのか外に置くのか。

支援計画をつくる作業は、書類を埋める作業ではなく、この10項目を自社で回せるかどうかを1つずつ確かめる作業です。私たちがご相談を受けたときに時間をかけるのも、たいていこの部分です。

なお、生活オリエンテーションについては、出入国在留管理庁が「所属機関は、当該外国人が本邦における職業生活、日常生活及び社会生活を安定的かつ円滑に行えるようにするため、生活オリエンテーションを行う必要があります」としています(「受入れ機関の方」)。項目の1つであると同時に、受け入れ直後の生活の立ち上がりを左右する部分です。

自社で支援するか、登録支援機関に委託するか

10項目を眺めたうえで出てくるのが、「これを全部自社でやるのか」という問いです。

制度上は、どちらも選べます。出入国在留管理庁は「支援の実施については所属機関で行うほか、登録支援機関にその全部の実施を委託することができます」としています(「受入れ機関の方」)。

そして委託した場合の効果が、実務上は重要です。

「登録支援機関に支援計画の全部の実施を委託した場合は、受入れ機関が満たすべき支援体制の基準を満たしたものとみなされます。」 (出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援・登録支援機関について」)

つまり、**自社に支援体制がまだ無い段階では、全部委託が体制基準を満たす近道になります。**初めての受け入れで委託から入る企業が多いのは、この仕組みによるところが大きいと考えられます。

自社で支援する 登録支援機関に全部委託する
支援体制の基準 自社で満たす必要がある 委託により満たしたものとみなされる
費用 社内の人件費として発生 委託費として発生
ノウハウ 社内に残る 委託先に蓄積される
向く場面 受け入れ人数が増え、社内に担当が置ける段階 初めての受け入れ、担当を専任にできない段階

一方で、委託は永続的な前提ではありません。受け入れが続き、社内に担当が育ってくると、「支援そのものを自社で回す」判断が現実的になります。私たちが内製化の支援を事業にしているのは、この段階で相談先が無くなる会社を実際に見てきたためです。ただし、**内製化が向かない規模というものもあります。**受け入れが数名で、担当を専任にできない会社が無理に内製化すると、10項目の一部が形だけになりやすい。そこは正直にお伝えしています。

なお、支援を一部だけ請け負う形の登録は認められていません。登録支援機関は支援計画の全部を実施できる必要があるとされています(同上)。「一部だけ外に出す」という選び方は、制度の建て付け上できないとお考えください。

分野ごとの協議会への加入も必要になる

見落とされやすいのが、分野別協議会です。特定技能の受け入れを行う機関は、分野を所管する省庁が設けた協議会の構成員になることが求められています(出入国在留管理庁)。

加入の窓口・手続き・必要書類は分野ごとに異なります。介護、建設、外食、製造、宿泊、ビルクリーニングでは、それぞれ所管省庁が違うためです。自社の分野の所管省庁のページで、加入時期と必要書類を先に確認しておくことをおすすめします。協議会の証明書には有効期限が設定されているものがあり、更新を忘れると次の申請で止まります。受け入れの初回よりも、2回目以降に効いてくる部分です。

受け入れた後に続く事務

在留資格が下りて働き始めたら終わり、ではありません。出入国在留管理庁は、受け入れ後について次のように記載しています。

「受入れ後、所属機関や登録支援機関は四半期に一度入管に対し受入状況や支援実施状況の届出を行っていただく必要があるほか、雇用契約に変更等があった場合も届出をする必要があります。」 (出入国在留管理庁「受入れ機関の方」2026年7月30日確認)

定期の届出に加えて、契約に変更があったときの届出があります。この事務を誰が担当するのかを決めていないというのが、受け入れ後にいちばん起きやすい詰まりです。委託している場合も、届出のうち受入れ機関自身が行うものは残ります。

まとめ:着手の順番

  1. 自社の雇用条件で、特定技能雇用契約の基準を満たせるかを確かめる
  2. 義務的支援10項目を読み、自社で回せる項目と回せない項目を分ける
  3. 分けた結果を見て、全部委託か自社支援かを決める
  4. 分野別協議会の加入手続きを、所管省庁のページで確認する
  5. 受け入れ後の届出を誰が担当するかを、受け入れ前に決めておく

人を探すのは、この5つの見通しが立ってからで間に合います。順番を逆にすると、入国の直前に体制の話が戻ってきます。

私たちは登録支援機関として、この5つのうち「自社で回せるか」を一緒に仕分けるところからお手伝いしています。受入支援の内容もあわせてご覧ください。

なお、本記事の内容は2026年7月30日時点で公表されている情報にもとづく目安です。制度の要件は改正されることがありますので、最新の要件は出入国在留管理庁の公表内容をご確認ください。

出典

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